Bさん事件医師の尋問
12月8日(水)
公判3日目。今回は事件医師の尋問を行います。
証言台に立ったのはBさんを受診した医師。彼は皮膚科クリニックを運営しているのだそうです。
医師は白髪の大柄な男性で、いわゆる「どら声」でしゃべる人でした。せっかちな性格なのか、質問が終わる前に喋り出したり、人の話をさえぎることもしばしばです。
まずは検察からの尋問。Bさんが暴行を受けて、クリニックを受診した時の流れについて聞きました。
その結果Bさんが医師に診断書の発行を望んだこと、ケガを負った経緯を聞いたところ「知人に暴力を振るわれた」と答えたことなどがわかりました。
「あなたから見てBさんの傷はどう見えましたか?」
「知人に暴力を振るわれたって言っても、ちょっと争った程度の傷にしか見えませんでした」
「あなたはBさんの頭のケガは診ましたか?」
「彼女から訴えがなかったので、そもそも診断していません」
続いて弁護人による尋問。白髪の主任弁護士が
「話を少しだけ聞かせてください。もし人間が何十回も殴られたらどうなりますか」と尋ねました。
医師は「何十回も殴られたら、骨が折れたり目が腫れたりするはずです。そんな人はうちのクリニックには来ないですよ。緊急外来行きだ」と回答。
Bさんは昨日の証言で「何十発も殴られた」と証言しています。どうやら弁護人は、このBさんの「何十発も殴られた」という証言の真意を正したいようです。
弁護人が続けて
「ではもう一つだけ質問を。数百発殴られた患者は見たことがありますか?」
「もし数百発殴られたら人はどうなりますか?」と問いただしていくと、医師はとうとう
「だから! 何十発だろうが何百発だろうが、そんなに殴られたらうちには来ないよ!」
と声を荒げてしまいました。
検察や弁護人の尋問のやり方に辟易していたわたしは、ちょっとだけ医師に同情。
それにしても、白髪の弁護士さんは喋り方がしぶいな。わたしも「もう一つだけ質問を」とか言ってみたいな。
医師への尋問は検察側・弁護側あわせて40分ほどで終了しました。午後の審理ではBさんの友人の尋問が行われます。
異議あり!
お昼休憩が終了すると午後の審理。この審理でわたしは「あのフレーズ」を耳にすることになります。
審理ではBさんの友人の尋問を行いました。見た目は「利発そうな青年」という印象です。
まずは検察の尋問。
「あなたとBさんはどんな関係ですか?」
「友達です。同じタイミングで上京した縁で、仲が良くて」
「事件の夜について聞かせてください」
「インスタを見たらBが『助けて』ってメッセージを書いていたので、電話をかけました」
「Bさんとは電話でどのようなことを話しましたか?」
「Bはすごく取り乱していました。『暴力を振るわれた』『殺されかけた』などと言って……」
ここで主任弁護人が立ち上がると
「異議あり。この発言は伝聞であり『伝聞証拠禁止の原則』に違反します」
と、裁判長に異議を申し立てました。
A裁判長が
「では検察に質問の意義を問います」と話を振ります。
女性検察官は
「事件の概要を改めるために質問しているだけであり『伝聞証拠禁止の原則』に違反しません」と答えました。
「弁護側の異議を棄却します。検察、続けてください」と、A裁判長。
「伝聞証拠禁止の原則」が何なのかはわかりませんが、「異議あり」というフレーズを聞けたことにちょっぴり感動。
その後もBさんの友人が証言を続けると、またも弁護人は「伝聞証拠禁止の原則」に基づいて異議申し立てを行いました。合計で7回ほど異議が唱えられましたが、すべて棄却されることに。
何度も異議申し立てを行われることに、A裁判長は
「弁護人、異議を一度にまとめることはできないですかね?」
と困惑。
Bさんの友人の尋問が終わり、午後2時に閉廷となりました。
わたしたちは評議室に戻るといつものように翌日のスケジュールを確認してから解散。このように裁判員裁判は結構早めに家に帰れます。心理的負担は大きいですが……
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