公判4日目・Dさん尋問
12月9日(木)
公判4日目の朝。
「布団から出られない……」
わたしは疲労感とともに目覚めました。布団から出るのも、朝食をとるのも、服を着替えるのもおっくうな気持ちです。Bさんの被害証言を聞いてからずっと、体調が優れません。
この日は2人目の被害者、Dさんの尋問に立ち会います。
Dさんは諸事情により「ビデオリンク方式」で証言を行うことになりました。
ビデオリンク方式とは、証人が法廷外でテレビビデオで証言するシステムのこと。被告人と同じ空間に立たずに証言ができるのです。
ちなみにDさんは裁判所の別室にいて、そこから映像を配信しているのだそう。
「こちら裁判室。聞こえますか?」
A裁判長が声をかけるとモニターにDさんの姿が映りました。(この映像は傍聴席には見えません。)
まずは検察による尋問。この日は前回とは別の女性検事が話しました。
彼女もよく通る声をしていて、聞く側にプレッシャーを与える迫力があります。検察ってみんなこういう声なのかな。
Dさんの事件も前回と同じく、
- 被告人、ナンパやマッチングアプリで被害者女性と知り合う
- 被害者女性を自宅マンションへ連れ込む
- 被害者の体に触れるも拒否され、被告人は激怒。
- 被害者を「殺すぞ」と脅迫する
- 被害者を殴る、首を絞めるなどの暴力を振るい、わいせつな行為をする
の5段落で解説できます。
「本当に、殺されるかと思いました」
証言の途中、Dさんは涙を流すこともありました。やっぱり被害者の尋問に立ち会うのは辛い……。
辛いのはもう一つ、
「被告人は無理やりわたしに〇〇をしました」
「〇〇とは具体的に何をされたのですか?」
という、性的な暴行に関するやりとり。これ、本当に省略できないのかな……
証言が終わると検事が
「加害者に対して今、どんな気持ちですか?」と質問。Dさんは
「一生許せないという気持ちです」と述べました。
事件の後、Dさんは友達にLINEメッセージを送ります。証拠としてその画面がモニターに表示されたのですが、
「今、男に監禁されてた」
「殴られて」
など、彼女の動揺が伝わるメッセージであふれていました。
検察側からの尋問が終わったところで午前の審理は閉廷。
弁護人・Dさん尋問
お昼休憩を挟んで午後の審理。弁護人がDさんに尋問を行います。
いつもの主任弁護人が席を立つと、被告人がDさんに充てて書いた謝罪文や示談書を提出します。
Dさんあての手紙には、被告人が
「一生かけて償いをさせていただきたい」「性犯罪者専門の治療を受ける」などと書いていることがわかりました。
次に示談書の内容。そこには「あなたの罪を受け入れ、謝罪を受け入れることにしました」といった文章が書かれており、そこにDさんの署名がありました。
続けて弁護人が
「Dさんは友人へのLINEで『殴られた』と書いてありますが、証言を聞いたところ殴られた様子はないようですが」と聞くと、Dさんは
「恐怖のあまり記憶が混乱していたので、ないことを書いてしまったのかもしれません」と述べました。
Dさんは語るだけでも辛い体験をしましたが、少なくとも彼女の「殴られた」という発言が誤りであることが判明しました。
だからどうしたと思うかもしれませんが、裁判というのはそうやって小さな事実を積み重ねていくことが重要だということを、この4日間でわたしは理解しました。
会社からのメッセージが怖い
Dさんの尋問が終わったところで閉廷。
いつものようにカフェで書き起こし作業をしていたら、会社の後輩からヘルプのメッセージが来ていてドキリ。
今の自分は全身全霊を裁判に預けていて、正直に言うと会社のことなど頭にありませんでした。
それでも後輩に問題の対処法を伝えると「なんとかやってみます」というメッセージが届いて一安心。
すると経理の人からもチャットが来ていて、そこには
「年末調整の送付はまだでしょうか? また、11月分の交通費の申請もお願いします」と書かれていてげんなり。
そういえば会社のメールボックスも全く見ていないな。くーっ、開きたくない……。
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